ギリシャ・ローマからニーチェにいたる西洋の哲学や、Yなど現代日本の思想家の著述まで授業に使われていた。
これらは私が日本語で読んでも難解であった。
ただし、Kは学部で哲学を専攻していて、家がキリスト教会であるので、哲学や宗教全般について、知識が豊富だった。
ときどき、「ああ、カルマのこと?」などと、内容を私の頭越しに理解していく場合もあった。
私が手伝うのは予習のリーディングなので、仏教用語の特別な読み方や意味についても、「一般にはこうなるけれど、専門用語は知らない」といえば、彼はその点を授業で教授に質問することができた。
このエクスチェンジは変則的なものである。
私には英語の作文と、固い内容の説明の練習になり、彼は予習の負担を軽くすることができた。
ときには私は彼の読むべき本を「宿題」としてもち帰り、図やチャートを作って、説明をわかりやすくしようとした。
初めのうち、このエクスチェンジを2時間やったあとは、頭がクラクラするほど疲れた。
Kにも毎度かなりの忍耐を強いていたのではないだろうか。
でも、だんだん内容そのものが楽しく感じられるようになり、彼も私の言う英語をそのまま書いて、理解してくれるようになっていった。
それにしても、アメリカに来てから仏教に詳しくなるとは、意外な展開であった。
私はKのために読んだ教材により、古代、中世、そして明治以後の神道と仏教と国家権力の関係などについて、関心を持つようになった。
彼の視点は日本の民主思想の形成にJ宗が果たした役割を捉えるという、現代的で生き生きとした発想に基づいていた。
「聖と俗の権力の葛藤」という西洋的な5人のパートナーはそれぞれ、私にとって貴重な体験をプレゼントしてくれたが、H・Hには、特に感謝している。
Hとは最後まで付き合い、姉妹のように仲良しになった。
彼女との出会いがなかったら、私の留学生活はかなり違ったものになっていたかもしれない。
Hと知り会ったのは、コロンビアのジャーナリズム・スクールの日本人のフェローが開いたホームパーティで、ジャーナリズム界の人も招かれていた。
Hは以前ニューヨークの共同通信のオフィスで働いていたことがあり、日本語ができた。
後日、パーティを開いた友人から電話があって、Hとランゲージ・エクスチェンジをしてみないかと言われた。
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